裁判での和解

和解協議で合意して解決

交通事故の損害賠償請求を含め、裁判では判決によらず和解で終える方法があります。
和解は、和解協議という話し合いをして、合意できればその合意内容をもって解決とする方法です。
裁判にする前の示談交渉も話し合いだったところ、裁判にしたうえで、再び話し合いをするということになります。

和解は判決と同じ効力

裁判で和解が成立すると、裁判所がその内容を記載した「調書」という文書(いわゆる和解調書)を作成します。
そして、この和解調書に関し、法律に以下のような規定があります。

  • 民事訴訟法267条(和解調書等の効力)
    • 「和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。」

すなわち、裁判での和解は確定判決と同一の効力をもちます。
確定判決と同一の効力ということは、和解でお金を支払うこととされた側が和解どおりに支払わなかった場合、支払を受けるべき側が強制執行をする根拠になるということです。


裁判官からの和解案

裁判では、一定の手続が進行した段階で、裁判官が和解案を提示するということが多く行われています。
交通事故の裁判でも同様であり、裁判官からの和解案が提示されると、裁判官が介在しての和解協議となり、ときには、被害者・加害者ともあっさり受諾することもあります。

そして、交通事故の裁判では、判決まで進めずに、和解で終えるということが多いのが実際です。
このため、示談交渉の段階で示談で終えるか裁判にするかを検討するうえでは、裁判にして和解に持ち込む場合を想定するのが通常です。

判決のリスクを回避

裁判官からの和解案が、裁判にする前の示談交渉で加害者側の保険会社が上限としていた金額より高額なら、被害者としては一定程度の達成をしたと感じられることが多いです。
加害者側の保険会社も、裁判官からの和解案であれば認めやすい傾向にあります。

裁判官からの和解案を受諾せず判決まで進めた場合、理屈のうえでは、その和解案より不利になるリスクは被害者・加害者ともありえます。裁判官からの和解案は、判決で不利になるリスクを回避できる、穏当な落としどころと見られるのが一般的です。

期間・労力・費用の追加を回避

裁判官からの和解案を受け入れて和解すれば、和解せず判決まで進めた場合に追加される期間・労力・費用の負担を回避できるメリットがあります。
判決となると、一方または双方が控訴できるので、さらに解決までの負担が増大する可能性があり、和解すればその回避にもなります。
それら和解のメリットは、被害者・加害者とも共通です。

もちろん、交通事故の裁判では、被害者・加害者とも争って譲らず、あくまで和解せず判決を求めることはあります。
しかし、比較的には、以上で述べたようなことから、裁判官からの和解案は受入れられやすい傾向にあるといえます。