交通事故後の減収と休業損害の関係

交通事故後の減収と
休業損害の関係

事故後の減収と休業損害の問題点

交通事故の休業損害を検討するうえで、交通事故後の減収と休業損害の関係が問題となる場合があります。たとえば、事故を原因とする減収の範囲が問題となる場合や、事故で怪我をしたことによる昇給遅延や就職遅延による減収、兼業主婦で稼働収入の減収がない場合などが挙げられます。


事故による減収の範囲が問題となる場合

交通事故で怪我をした後に減収があっても、事故以外の原因による減収については休業損害とは認められません。そして、職種によっては、営業状況や景気・社会情勢など、事故以外の原因による減収も一般にありえます。
このため、事故を原因とする減収がどの範囲か問題となり、それを明確には識別できないということが起こりえます。その場合、一定の休業損害は認められても、事故を原因とする真の休業損害よりは低額になる可能性はあります。勤務先がちゃんとした証明書を発行してくれる給与所得者でない場合、減収の全てについて休業損害が認められるとは限らないということになります。 

昇給遅延による減収と休業損害

給与所得者が交通事故で怪我をすると、事故がなければあるはずだった昇給や昇格が遅れることがありえます。その場合、事故による現実の減収のほか、事故がなければ得ることのできた昇給・昇格後の収入と実際の収入との差額を減収として、休業損害を加害者側へ請求することが多くあります。
しかし、この請求が認められるためには、事故がなければ昇給・昇格していたこと、その昇給・昇格後の収入、昇給・昇格の遅れが事故を原因とするものであることなど、具体的に証明する必要があります。

就職遅延による減収と休業損害

学生が交通事故で怪我をして、卒業が遅れた場合、それにより就職も遅れて、減収が生じるということが起こりえます。 そのような場合について、休業損害を認めた裁判例は多くあります(たとえば、東京地裁平成12年12月12日判決・平成21年9月10日判決、大阪地裁平成14年8月22日判決・平成30年4月16日判決、名古屋地裁平成14年9月20日判決、京都地裁平成20年2月29日判決など)。
また、大学受験の前に交通事故で怪我をして、大学受験が遅れた場合、それにより大学入学・卒業・就職とも遅れて、減収が生じるということも起こりえます。この場合、事故との相当因果関係を吟味して、休業損害を認めた裁判例があります(たとえば、東京地裁平成13年3月28日判決、岡山地裁勝山支部平成1年8月16日判決)。

兼業主婦で稼働収入の減収がない場合

パートやアルバイトをしている兼業主婦の方が交通事故で怪我をした場合、症状や通院によって家事労働には支障が出ても、パートやアルバイトの稼働収入には減収がない、あるいは減収はあっても少額ということがあります。
そのような場合も、休業損害は、 家事労働の休業損害として、これまで認められています(ただし、金額の問題は別途あります)。
なお、そのような兼業主婦の被害者の方で、加害者側の保険会社から休業損害は主婦としての休業損害(主婦休損)として扱うと言われたとおっしゃる方が少なからずいらっしゃいます。パートやアルバイトの休業損害は支払われないと思い、無理をして出勤していたというわけです。しかし、兼業主婦の方の場合、稼働収入と家事労働の双方が休業損害で問題となりえますので、その点についてもなるべく早めに弁護士にご相談なさることをおすすめします。